逆説の日本史〈10〉戦国覇王編

井沢元彦(著)小学館(2006年6月)

信長編である。
本能寺の変までの信長の非業残虐(といわれる)所業を当時の宗教観と照らしながら信長の考え方を分析してみせる。

しかしながら、著者独自の信長観がいろいろと説明を加えながら記述されているにもかかわらず、信長が朝廷をなぜ排斥しなかったかについては、本シリーズに継続して用いられるテーマである「怨霊信仰」(たたりが怖かった)の一言で説明されている点は、説明不十分である。逆上して本願寺を焼き討ちしたと一般的に言われる信長に対し、著者は、信長は当時の宗教感覚の中で理知的に思考しそうせざるを得なかったという説明をしているのであるから、朝廷についてもそれなりの「積極的な」理由を挙げて欲しかったと思う。