山本七平の叡智

谷沢永一(著)PHP研究所(2007年)
平成4年辺りに出版された本の復刻版らしいが、出張の往路、羽田空港で偶々目にしたので飛行機の中で読むべく購入。
山本七平は「イザヤ=ベンダサン」というユダヤ人名で「日本人とユダヤ人」という本を書いたといわれているが、日本や日本人を客観して捉えているところは、司馬遼太郎と通ずるところがある。
司馬が「思い込み」をとても大事にする(悪く言えばかなり登場人物にバイアスをかける)のに対し、山本はどこまでも「日本とは」を淡々と追究して行こうという姿勢が貫かれているといえるのではないか。
日本の価値観は「貞永式目」に現されているとか、先般読んだ「空気の研究」とか、戦争と軍隊から見える日本人の思考パターンとか、何となく我々が潜在的に思っているようなこととは、少し異なった角度ではあるが切り込んでいくところに、山本の魅力があるのではないか。「常識」とか「あたりまえ」を疑ってみるにしても、自分の思考パターンが見えていない人には、それを疑うことは難しいということに気がつかせてくれる存在でもある。著者である谷沢はその辺を抜粋して解説しているが、あえて言えば、解説にはかなり谷沢のバイアスがかかっているため、もっと控えめに書いたほうがよかったのではないだろうか。
巻末に著書目録もあり、リファレンスとしても使える。


「空気」の研究

山本七平(著)文藝春秋社(1983年)

空気の研究と言っても科学書ではない。日本人の意思決定を取り巻く「空気」の形成要因やその波及について論じたもので、
いわば日本的な意思決定の持つ特質を掘り下げようという試みである。

本書は、「空気」の研究、「水=通常性」の研究、日本的根本主義について、あとがき、の4部構成となっているが、冒頭二部が面白い。

以下の引用をしておきたい。

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