ビッグデータの正体

ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える
ビクター・マイヤー=ショーンベルガー ケネス・クキエ
講談社

2015年9月20日読了

ビッグデータという言葉はBuzz Wordsの一つであまり好きではなかったので、敢えてその手の書物や雑誌は避けてきた。しかし本書はなぜか書店でたまたま目に入りたまたま手に取り読む価値があると感じた。

それはビッグデータが単に「すごい魔法のようなもの」としてしか説明されていないのでなく、また負の面についても具体的に触れられているからだ。

ビッグデータの特徴を、因果関係ではなく相関関係の見出しにあるとする。アマゾンである本を買った人に対して他の本を薦めるのは、それらが例えば教科書と問題集のように因果関係があるからではなく、データによって関連性が見出されているからだ。書評などの才能は必要ない。

このような相関性は人の行動を予想させるのに役立つだけでなく、個人の識別までもできてしまう。しかしデータを支配するだけでは役に立てることにはならない。データ本来の利用目的から離れて、二次的な利用方法に「気づく」ことが必要である。

そのためには、個人情報の保護を個人の許諾を基礎として成立させるのではなく、利用者側の利用目的によって法体系を整備しなければならないとするのは、ナイフが便利な道具であるか武器であるか使い方しだいという点と同じだろう。情報利用目的を示して一々許諾を得ているのでは、古い著作権(特に映像)が出演者一人ひとりに利用に関して許諾を得なければならないとするのと同様、データの利便性を著しく下げる。しかし、犯罪者の予想のようなことに使うことは、人間が責任を負うのは人間の意思に基づく行為に対してであるという自由の原則に反するとして、強く反対する。データの解析によって人間は自らの未来を変えることもできる。

またデータの利用に当たっては、アルゴリズムやデータそのものの信頼性について人間の判断が必要である。さらにビッグデータの解析ではアルゴリズムがもはや単純に理解し得ないものも出てきているので、「アルゴリズミスト」と呼ばれるデータの監査人が必要となると示唆している。

最後に、ビックデータというツールを使うに当たって忘れてはならないこととして、十分に謙虚な姿勢と人間性だと締めくくる。

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