謙虚なコンサルティング

2017年8月16日読了

シャインを初めて読んだのは、20年前にアメリカに研修で行った際の教材だった「Process Consultation」だった。当時、監査しか知らずコンサルティングとはどういう仕事なのか、やり方含めて勉強してこいというミッションを課せられて、最初に触れた本である。

当時、コンサルは何かの知識や実現方法を客先に伝授するものだという考えを漠然と抱いていた自分の頭には、シャインの考え方は衝撃的だった。
すなわち、一般に知られているコンサルティングとは、「医者ー患者モデル」と言われるもので、事情や知識において強い立場と弱い立場にある関係から患者が医者に答えを求めて、逆に医者は患者にソリューションを提供するという考え方だった。しかしシャインは、顧客によりそい問題を一緒に考えながら顧客が答えを見出していく過程をサポートしていくという新しいコンサルテーションを提案していた。それがプロセスコンサルテーションである。

あれから30年。自分はコンサルタントとしては成功しなかったが、逆にこの年齢になってからシャインの考え方に共感を覚えるようになった。
そして本書に触れてさらにそれを強くした。

本書の「謙虚なコンサルティング」のメッセージは明確である。

1.一緒に力になりたいという積極的な気持ち
2.相手の状況に対する好奇心を持つこと
3.相手に対する思いやりを持つこと

こうして、ビジネスライクなレベル1の関係からパーソナルな情報交換を含むレベル2の関係に入っていくことで、プロセスコンサルテーションは可能になる。

実は問題自体は問題ではなく、心配していることそのものが解決したいことであったり、逆に問題は解決方法のない事情があったりすることもあり、その状況に応じてクライアントが次のステップへ進む(アダプティブ・ムーブ)ことを側面から寄り添うのが、シャインの考えるコンサルティングであった。

監訳者(金井壽宏)の解説にもあるが、人生におけるいろいろな場面における相談事でこの姿勢は大いに活きるだろう。また、自分が他人に相談するときに「解を求める」姿勢ではなく、一緒に考えてもらう(つまり自分で考える)という姿勢で望むと、シャインの言っているレベル2の関係を構築しつつ問題(と思っている自分の気持ち)を解決していく道筋がつけられるのだろう。コンサルタントを目指す人だけでなく経営者の立場にある人にも参考になる一冊だ。

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