「城取り」の軍事学

「城取り」の軍事学 (角川ソフィア文庫)
西股 総生
KADOKAWA (2018-09-22)

2019年7月6日読了

IT監査部のマネジャたちが私の退職に当たって淡路町で送別会を開いてくれるときに、待ち時間があったので、近所の神谷書店に久しぶりによってみた。かつては地図をたくさん売っているところだったが二階は既に使っておらず、一階のみ。普通の本屋さんになっていたが、やはり店主の趣味だろうか、品揃えや棚の配置には気品を感じた。

たまたまそこで眼に入ったのが本書。「城取り」とは城の縄張りのことだが、一般にイメージする城郭のあるお城ではなく、特に戦国時代頃の山城についての研究だ。著者は自ら山に登り、自分で絵図面を起こすほどの熱のいれようなので、解説も城の地政学的位置づけや、城の形からの軍事上の考察など独自の視点が入っていて、とても興味深く読める。
著者によれば日本全国に「城」とされるものは4-5万箇所、近代城郭が数千箇所以上あり、全てが研究されているわけでもなくまた地元の人が立てたであろう説明用の看板も必ずしも正確ではないという。
そういう認識なので、自ら歩いて登って「感じる」ことを基礎にした視点が、興味が湧くのであろう。

城は防衛拠点としての機能で作られ、従来言われている権威の象徴としての機能は否定している。
そして、その城をどう攻めるか、また攻めてに対してどう守るかという観点から、城の虎口や曲輪、堀などの形状を見ていくと、実に興味深い工夫がされていることが分かってくる。城は城としてその作られた時代の何らかの目的があり、歴史背景なども考えながら捉えるべきとの主張は興味深い。

あまりにおもしろかったので、本書に紹介されていた「杉山城問題」についての本も購入してしまった。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.