逆説の日本史 14 近世爛熟編

逆説の日本史 14 近世爛熟編 (小学館文庫)
井沢 元彦
小学館 (2011-12-06


忠臣蔵から話が始まる。
そもそも忠臣蔵とはお芝居であり、赤穂事件が話のネタになっている。
しかし、日本ではあたかも忠臣蔵が史実であるかのようになんとなく信じられており、赤穂事件の本質は横に置かれている点を指摘する。
赤穂事件とは、赤穂藩主浅野長矩が高家吉良上野介に斬りかかった刃傷事件で、長矩は切腹、藩が取り潰され、その後、浪人となった大石内蔵助たちが吉良に報復した話だ。
著者は、もともと浅野家が接待饗応役を仰せつかっていたのは二度目であり、お芝居に出てくるように長矩が上野介にいろいろと質問をしたとかこれについて嫌がらせを受けたというのはおかしいとしている。そして、長矩には統合失調症があり「乱心」によって吉良に襲いかかったものの、一太刀で斬れず恥をかき、大石らは乱心であることを隠すためにあえて上野介を悪役に仕立てたとする。
そのほか、綱吉が武断政治から文治にかえるきっかけを作った名君であり、このイメージを生類憐みの令を持ち出して悪将軍に仕立てたのは、のちに正徳の治をなした新井白石の陰謀であるとか、朝鮮通信使にまつわる対馬藩の公文書偽造など、著者なりの視点がある。
特に、朝鮮がいまだに朱子学の呪縛から逃れられず、ありたい姿よりもあるべき姿をもって外交に臨んでくるといった視点は、なるほどと思わせる。

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