逆説の日本史16 江戸名君編

逆説の日本史16 江戸名君編 (小学館文庫)
井沢 元彦
小学館 (2013-06-06)


江戸名君として、徳川光圀、上杉鷹山、保科正之、池田光政を扱う。
徳川御三家のうち、水戸家は大日本史の編纂など結果的に徳川幕府を潰してしまう基礎を作ってしまったのはなぜなのかという疑問に対し、家康の意思であるという大胆な考え方を提唱する。歴代将軍家は天皇家の血筋が入っていない。しかし水戸家は例外であり、慶喜が将軍になることで初めて天皇家の血を引いた将軍が擁立されたことになるという。こういう視点でものを見る面白さは、井沢流の歴史学者ではなく小説家としての物の見方が出てきて、面白いところである。
後半は、従来の上方中心の文化に対して独自に目を出してきた江戸文化について語る。歌舞伎、俳句などの江戸独自の文化の起こりと、落語のような東西それぞれで発達した文化の起こりについての記述。
江戸は家康入府によりできた新しい都市なので、文化としては上方が中心であったが、俳諧などの登場によって江戸文化として独自に育ち出す。
歌舞伎は上方の人形浄瑠璃から起こっているなど、新視点が散りばめられている。
日本の識字率の高さは江戸時代は世界一だったという視点にたち、それが寺子屋教育の賜であるという一般常識を覆し、太平記読みや平家物語など、文字を知らなくても物語を伝える方法が広く使われていたことが、言葉を先に覚えて文字を学ぶというプロセスを容易にし、結果的に識字率を高めたという考え方は、興味深い。
ややこじつけ感もあるので、さらなる研究があってもよい。

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