ラジオ顛末

小学生の頃「子供の科学」を読んでラジオとかマイクとかガラクタをよく作っていたが、チップ技術の発展はすさまじいものがあり、いまやラジオの主要回路部は半導体に焼き付けられてワンチップ化されている。
http://www.tristate.ne.jp/fmam_module.htm
半導体の中身は「等価回路」といわれるように、元は各種部品を組み合わせたものが入っているのだが、ワンチップ化することで実装部品点数は格段に少なくなりサイズも極小化できてしまうため、他の部品も機械実装された基板として売られていることが多い。
こうなってくると、違いが出てくるのは筐体の意匠とか付加機能ということになるが、それ自体はラジオの本質部分ではない。
結局、壊れても部品取替えによる修理は不可能で、基板全体を交換しなければならないため、箱の中身を丸々入れ替えるようになり、その手間を考えれば「買い換えたほうが安い」ということになる。
最近、子供の科学離れとか理科嫌いなどがよく言われているが、こういう代物がラジオであると認識した子供が、ゲルマニウムダイオードとコイルを半田付けして音が出たと喜ぶとはとても思えない。かくして物事の原理というものは忘れ去られ、モジュールを作る人と使う人とが完全に分かれる社会が出来上がってしまう。
お彼岸に購入したラジオは、中国製だが回路がデジタル制御されており、音がとてもよいし、チューニングも自動化されているので、とても使いやすかった。でも付加機能であるアラームに問題があった。予め設定したAM周波数の局ではなく、全く異なるFM局で目を覚ましてくれるので、(驚いて目が覚めるので、目覚ましラジオとしては期待以上の効果があるのだが)メーカーに問い合わせたら、ロット全体に不良があったようで、交換ではなく返金することになった。
実は、なぜこのような単純な不具合が発見されずに市場に商品が流れてしまったのか、とても興味がある。ワンチップ化でラジオに関する知識が集積された部品と、それを元に組み立てるだけの工場と、販売ルートに乗せる業者と、完全に分かれてしまったモジュール化社会の落とし穴のようなものが見えて不気味な気持ちが打ち消せないでいる。
たかがラジオだが、同根の問題は、原子力発電所や、通信システム、資金決済ネットワークなどにも内在化しているのではと考えてしまうのは、心配のしすぎ?

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