国立公文書館平成26年特別展 江戸時代の罪と罰

半年ごとに企画を替えて行われる特別展。
今回は江戸時代の刑罰に関する史料の公開である。

http://www.archives.go.jp/exhibition/

国立公文書館で開催されている。
お役所だが、木金は遅くまで開いているので仕事が終わってからでも行くことができるのはありがたい。

小伝馬町の牢獄の全体絵図面
斬首、磔、獄門などの処刑の具体的な手順方法(絵)
当時は死罪であっても罪の中身によって処刑の方法が変わっていたようだ。
罪と量刑のについては「秘密」とされたため、現場が困ってそのマニュアル本が出回っていたという話
鼠小僧の実際に忍び込んだ屋敷を一覧にした地図
米国の監獄の思想と環境を知った吉田松陰の改善策
など興味深いものがたくさんあった。

当時の具体的な罪とそれに対する量刑もなかなか興味深く、今では民事とされる案件(間男など)も「罪」とされて、心中なども当事者の関係やどちらかが死亡した否かで罪が違っていることが具体的に決められているあたり、案件が多かったのだろう。
また、今では死刑は絞首刑のみだが、これは明治に入ってから斬殺・絞殺に統一され、しばらくして絞殺という形になったこと、また絞殺の方法も当初の方法はなかなか息絶えず蘇生することすらあったため改善されたなどの解説もある。


伊能忠敬の日本図

東京国立博物館の企画展示に行ってきた。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1674

多分、本物を見るのは初めてかもしれない。

大々的にされると人が多くて何も見れなく、しかも長時間がかかるので疲れてしまうが、10枚程度の地図で小規模展示なので、来客も少なくゆっくりと(しかも2度も)見ることが出来た。

歩いている所とその周辺という意味合いでの世界観の捉え方は変わっていないが、自分の歩いているところを周辺の山の頂や岬の突端を利用して、客観的に捉えているという点で近代的な地図の作法であることがよく分かる。代表的な場所となところを先ずは決めて三角法を使って相対的な位置関係を決めながら、細部を記述していっているようだが、例えば海岸線の村の位置と近くの山の位置関係は補助線が入っていないので、どこまで正確なのかはわからない。つまりどこまでが近代的な方法に依る地図であり、どこからが「スケッチ」なのか、その辺をもう少し深堀りしてみたいところだ。

絶海の孤島だと思っていた八丈島も、伊豆から島伝いに目視で確認できることがわかり、昔の島流しの際にどのように島にたどり着いたかが、測量の線を伝うことで分かった。また、場所の較正に北極星を使っているため、緯度は近代地図とほぼ同じ数字を使っているのだが、経度は京都を中心に東西に延びているという点が、注目すべきだろう。当時の地理的中心地はやはり江戸ではなく京だったのだ。

展示が暗いので目が悪い自分には細かい字が見えなくなっており残念だが、伊能図の迫力を精緻さは十分に堪能できたのだった。


零戦を見た

夏休み最後の日。
所沢航空発祥記念館で、特別展「日本の航空技術100年展」を見学に行った。
もちろん動態保存されている零戦21型の見学である。
平日なので見学者も少なくゆっくりと見ることができたのはありがたかったが、あれほど間近に零戦が眺められるとは(手を伸ばせば触れるくらい近く)。
サイパンが陥落した際に10機以上がそのまま米軍に押収され、アメリカに船で運ばれて試験飛行がされ零戦が研究され尽くした。さらに、その後は「余剰品」として廃棄される運命となり、最後となった本機も動かなくなっていたものらしい。
しかし、戦後に日本から堀などの開発技術者などが寄り集まって「栄エンジン」を修復し、Fame Of Planeに動態保存されることになった。
かつて日本にも70年代と90年代と2度来ており、その時は飛行も披露されたようだが、2013年の今回はエンジン始動とタクシングのみ。おそらく次の20年後にまた来日する際には、ぜひその雄姿を拝みたいものだ。


空襲の記録&終戦詔書@国立公文書館

国立博物館で「和様の書」に酔ってしまい、さらに欲張りなことに国立公文書館
連続企画展「空襲の記録―全国主要都市戦災概況図―」
開催期間中における「終戦の詔書」原本の特別展示について(期間限定:平成25年8月12日~8月30日)
を見た。
ここは、場所が九段下と竹橋のちょうど中間でしかも北の丸公園の端っこにあること、さらには地味な施設なので、いつ行っても空いている。
空襲状況図は、戦後の混乱期にいろいろな地形図を用いていろいろな方法で調査された結果なので、どの程度正確なのかも比較するとなんとなくわかってくるのが興味深い。
空襲の方法も色々あるなと考えさせられる。
ピンポイントで重要建物ばかりを狙った爆撃や、ローラーで撫でた如く一直線な爆撃、さらには執拗に複数回に亘って面をびっしりと隙間なく爆撃するなど、各地の空襲被災図は色々と語る。
空襲図は全体の三分の一が入れ替え展示なので、残念ながら宇部の空襲図は見ることができなかった。
しかし圧巻はもう一つの展示である、終戦詔勅の原本である。
終戦詔勅自体は、何度も見聞しているので、「完成された」文章は馴染みがある。しかし、国家の一大事を決定するにあたり、終戦詔勅の草案、第二案、第三案、第四案、詔勅正本(修正つき)という具合に、終戦時の慌ただしさの中で、国家の命運を決める文章を推敲していく緊迫感は、少ない地味な展示ながらも、歴史を担う誇りを持った人たちの仕事を感じざるを得ない。
最後に筆で清書されたものに御名と御璽が入るのだが、その現物は書き直さず、原稿用紙のようにカッコ書きで加筆したり紙を削って文字を書き換えているあたりは、よほど慌ただしい中で作成されたことが窺えるのである。しかも、一方では「書類上は後処理で」という現代の会社で形式を整えるために行われる作業がとられていないことが、当時の人々の誠実さをもわからせてしまうのである。
詔勅原本が拝めることだけを期待していたのだが、その作成過程を見ることができるという意味をあらためて理解した。
なお、終戦詔勅の録音盤を巡るストーリーは、「日本のいちばん長い日」という映画がある。


特別展「和様の書」@国立博物館

暑さを押して夏休みを利用して上野に行ってきた。
目的は、
特別展「和様の書」 | 東京国立博物館 平成館 | 平成25年7月13日(土)~9月8日(日)
である。
暑さのせいか想定よりかなり空いてはいたが、展示内容が圧巻だけに相変わらずの人気である。
いわゆる、国宝級の三蹟・三筆の書や、後陽成天皇の宸翰、信長、秀吉、家康の直筆などが拝見できるわけで、これを見逃さない手はない。
平家納経(一部)まで展示してあるとは・・・。
やはりほれぼれするのは、貫之の古今和歌集である。
どうしてああいった美しい線が筆一本でかけるのか不思議だ。
コンピュータがどれだけ発達しても、同じ字は書けないが、人は新たな美を作り出すことができるだろうと思うと、安心する。
さらに、千年以上も紙を補修しながら民族の財産として引き継いでこられた歴々の日本人に感謝せざるを得ない。能筆は人に属するものだが、その美は形こそ変えつつも原典に戻って学んで引き継ぐことができる。まさに国宝なのである。
http://wayo2013.jp/
その後、常設展示に行った。特別展で3時間も粘ったので、こちらはざっと眺めようという気持ちで特段の期待はしていなかったのだが、あの「ワカタケル」の文字が読み取れる「江田船山古墳出土鉄剣」がさり気なく展示されていた。
しかもガラスケース自体が独立しており、前後左右からみられるようになっており、刀の背の銘文だけではなく、腹に掘り込んである馬、鳥などの絵紋も見ることができたのは、感激であった。