はじめての人工知能

2016年5月16日読了

人工知能については、いわゆる人間活動を脅かす脅威論と、人類に貢献する期待論とが入り混じっているが、結局のところコンピュータの所作に過ぎないというのが著者の見解。曰く「コンピュータをよりよく使おうとするすべての研究の総称」と。

端的に考えれば、「すごい」とか「便利」というのは人間の感情であり、それは直観をも含む判断ではない。つまり、コンピュータはどう発達してもコンピュータである限り、「すごい」「便利」は提案できても人間に置き換わることは不可能である。換言すれば、そのように人間が制御しなければシステムが暴走していることになる。その行為が暴走かどうか自体も人間が決めることだ。そこは鉄腕アトムが人工頭脳をもってしても、最後はお茶の水博士が決めることなのだ。

人工知能は人間の知的活動を強化すべく、ある目的に沿ってコンピュータの特質を活かす範囲で、脳活動の一部を模倣するものと考えれば、いくら発達しても人間の存在が侵されるわけではない。

斯様な価値観に立てば、人工知能は「ソフトウェアの働き」として理解することができるため、本書はその要素技術のほんの触りの部分をエクセルを用いて説明しているので、身近に感じさせる。著者は、元は富士通のソフトウェア技術者であるが永年沼津高専の講師でもあり、生徒に教える感覚で本書を書かれたものだろう。エクセルによるプログラムは出版社のサイトから入手できるようになっている点も本書のメリットだ。

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