ビッグデータと人工知能 – 可能性と罠を見極める

2016年9月11日読了

いわゆるコンピュータの演算素子数が人間の脳細胞の数を超えるときが2045年あたりに来るとされ、これをシンギュラリティと称して、コンピュータ(人工知能)が人間を支配するという議論があるが、著者は明確にこれを否定する。

コンピュータはあくまでも人間が使うものであって、人間が使われるものではないという著者の考えには共感する。

その根拠として挙げているのが、コンピュータに命令や情報を与えるのは人間の側であり、コンピュータが気を利かして自らそれをするわけではない、特に必要な情報は何かということについては人間の価値判断が加わるが、時と場合によってそれは変わるので、コンピュータはそれを凌駕しえない。

しかし、日本のコンピュータ科学者たちは、いわゆる理系人間のカテゴリに入り、コンピュータの簡単な構造すら知らない文系人間に使われているというあたりは、部分的には言いえているところがあるが、必ずしもそうではないという反論もあろう。むしろ、文系・理系というくだらない枠組みを乗り越えて、気たるべき時代に人間として何を学ばねばならないかという点について、さらに掘り下げた議論を期待したい。

最後に著者が提唱するのは、「集合知」の考え方と、IA(Intelligence Amplifier)である。
集合知とは専門家の専門領域が細分化してしまいそれぞれが蛸壺に入っては合理的判断に必要な専門知が融合するという効果が失われてしまうので、専門家が横に議論することで専門知を創出しその手助けとして人工知能などの技術を用いるということである。つまり人工知能(AI)を用いて、知能(Intelligence)を増幅(Amplify)するということのようだ。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


計算式を埋めてください * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.