東京裁判を正しく読む

牛村圭・日暮吉延(著)文春新書(2008年)
東京裁判研究に従事している若手(といっても昭和30年代生まれ)の研究者の二人による対談企画を本にしたものである。
いわゆる東京裁判史観と言われている、「勝者の裁き」「文明の裁き」といったステレオタイプを排除して、最近発掘されつつある新たな史料などをも加えて、客観的事実から東京裁判を見直していこうという姿勢で両者は一致しており、善悪を超えたいろいろな問題を丁寧に取り上げようとする姿勢がよい。
またA級戦犯が裁かれた東京裁判の陰で、ろくに裁判にもかけられず処刑されていったBC級戦犯のことも含めて東京裁判を議論している二人には、イデオロギーを乗り越えて歴史認識を語ろうとしており、いわゆるパルの日本無罪論だけを取り上げたり、ことさら二元論でとらえようとする戦後の学者の姿勢に対する批判も鋭いものがある。
東京裁判を勉強することは、自分にとっては物事の見方や論理の立て方、説明の仕方、人間の利害得失への対応、窮地に追い込まれた人間の姿など、いろいろな学ぶ題材があって、歴史に学ぶには最高の教材であると思っているが、扱っている書籍が少ないことが残念である。
そういった中で、若手が新たな議論を書物で出してくれることは実にありがたく読ませていただいた。

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