大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇



先に読んだ「陸軍良識派の研究」で登場した堀栄三による情報参謀としての経験を書物にしたものである。
堀は南北朝時代に後醍醐天皇が吉野に下った際に陣を構えたその家の子孫という事らしいが、本書の内容とは関係がない。
日本軍が先の大戦において情報を軽視して判断や戦略を誤ってしまったことが、情報参謀の立場から記述されている。特に、南太平洋において日本軍が島を占領するに辺り「土地」を確保することを目的として戦線を拡大していったことに対し、米軍は飛行場を確保して面的あるいは立体的に制空権を拡大していくことを目指していたこと、さらには制空権により日本軍が占領していた島は単なる「点」となり、戦う意義がなくなっているところに、地図でしか島を見ていない参謀本部が実態はジャングルや河川がある陸上を進撃させる愚に出て行ったことなどが書かれている。
またレイレ等の山下奉文将軍の情報参謀であった筆者が米軍の攻撃手法の研究成果として「米軍は山に弱い」という一つの知見を提供することで、山下将軍が消耗戦ではなく持久戦に持ち込んでいく様子などが読み取れる。
軍隊という組織の問題として捉えるも良いが、一組織人として情報というものを冷静に冷静に見ていくことの難しさのようなものも学べる。実は、この本は97年当時に購入してそのまま本棚に入っていたものだ。買っておきながら、どうしてここまで読まずに置いたのは残念でならないが、「良識派」を読んだ際に「もしや」と思い本棚を探したら出てきたもので、15年も前に買った本を今頃になって読んでいるのも不思議なご縁を感じている。

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