暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり

2015年9月23日読了

MT.GOXの破綻で話題になったビットコインだが、もともとのビットコインの技術や暗号通貨の存在意義と会社の経営の問題とは別に議論すべきだろう。日本でのMT.GOXの倒産劇に関係なく、海外ではビットコインは使われ続けており、実際にネット上での決済で「ビットコインが使えます」というサイトをいくつか見たことがある。Harvard大学のキャンパスでも使われているという情報もどこかで見た。それを技術を用いてどう実現しているのかがよくわからないのが、ずっと気になっていたところなので、もう少しビットコインの仕組み自体を知り、ベネフィットとリスクとを理解したいところだった。本書は、技術で定評と歴史のあるブルーバックスであり、ビットコインを扱ってくれたので早速購入した。

新しい物好きには、ビットコインが何かの可能性を感じさせる魅力がある。
貨幣だが発行体としての中央銀行が不要で、決済が可能だが銀行のような決済機関も不要である。しかし普通の通貨として流通し交換できるので、それ自体が貨幣として「認知」されている。

そもそも貨幣が貨幣として認知されるのはなぜか、あるいはその価値はどのように保全されているのかという点については、ビットコイン以前に曖昧な理解しかない。一万円札は一万円の「価値がある」といわれるが、それを政府や日銀が保証しているわけではない。あくまでも、一万円札がコピーされて勝手に増えたりしないことや、他人の一万円札を盗んだ場合には「福沢諭吉の肖像の入った紙」(アイドルで数百円か)ではなく「一万円という価値」を盗んだという判断がされること、そういう仕組み(システム)が保障されているだけなので、一万円で飴玉一つ買えないことも可能性としてはありうる。貨幣とは「一万円」という複製不可能な交換手段となりうるというだけの話で、国家は手段を担保しているという前提だ。

ビットコインは、いわば国家体制による価値流通の仕組みの外側で、一般的な貨幣による価値流通と共存する仕組みとしての挑戦である。もともと貨幣以外の価値交換手段は、物々交換を取り出すまでもなく、金塊や貴金属、あるいは実物資産などがあるが、その一つとして考えることができる。

さらに、貨幣を決済する(支払う)手段として考えると、対面による貨幣の受け渡しに加え金融機関を通じた決済やクレジットカード、プリペイドカードを通じた決済があるが、いずれも「ここにある唯一の一万円」の移動を記録しながら価値の貯蔵場所を移しているに過ぎない。そう考えると、ビットコインは決済の手段にもなるが、その場合は補完というより代替手段ということになるだろう。

具体的なビットコインの仕組みは、約束手形の流通に類似している。同じものが世の中に存在しない約束手形の上には、発行者、金額、日付、受取人が記載されている。一番目の受取人は、これを銀行に取り立て依頼をかけることも可能だが、裏書という手段で第三者への支払い手段とする事も可能だ。受け取った第三者は、更なる第三者へ裏書譲渡できるが、これを続けると「手形用紙」の上には、譲渡の履歴が連続して記録され、その記録は同一のものが存在しない前提で「手形用紙」と一緒に情報として受け渡しされる。

ビットコインは、この仕組みをチェーンブロックという形でデータに置き換え、さらにネット接続されたコンピュータ上のwallet(お財布)に記録する。記録は暗号化されているのでネットを介してP2P形式でwalletを駆け巡る。当然のことだが、取引履歴を引き継ぐことによって引継ぎ情報は増えていく。したがってビットコイン自体の発行量には上限がありインフレーションを防いでいるとされる。

このほか、マイニングという解読作業があって、これがビットコインを発行して報酬として受け渡す仕組みになっているとされるが、ここについては肝の部分だが、まだ理解が不十分なため、再読しているところだ。

本書では触れていないが未だ解けない疑問として、当初のビットコインはどのように生まれたのか、ビットコインを預けて「金利」を生むことは可能なのかという当たりを解消できれば、おそらくかなりの理解が進むのではないか。

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