蘇我氏の正体

関裕二(著)新潮文庫(2009年)

蘇我氏の正体 (新潮文庫)
関 裕二
新潮社


大化の改新で日本史の悪役とされている蘇我氏の実態について、「蘇我氏の出自は日本書紀で藤原氏に抹殺されたのはなぜか」という問題を提示し、迫っていく内容である。
著者には「藤原氏の正体」という前作があるが、未読であるため順序を誤ってしまったかもしれないが、支障はない。
著者は蘇我氏とは半島系渡来人でたたら鉄を扱う技術者集団であり、やがてヤマトで政治力を持つようになった部族であるとする。
日本書紀に登場するスサノオノミコトが乱暴狼藉を働いてアマテラスから半島新羅に追放され、また出雲の国に戻ってきたという話と、記録が正しければ三世紀に亘って生きたことになる武内宿禰、そして皇祖神を導いて出雲から伊勢にやってきた猿田彦との間に、関係性を見出す。
そして、ヤマトから派遣された、トヨ(神功皇后)と天日槍が九州邪馬台国を討ち、天日槍をヤマトの王に立てようとするのだが、ヤマト政権から裏切られ、九州でトヨが天日槍を討ち取って(かくまって)自らが王位につくも、結局は九州南部に追いやられることになる。
二人の子供は天孫降臨で神武天皇となり東征してヤマトに至るが、天変地異が続いたヤマトでは二人のたたりを恐れて、伊勢に天照大神と豊受大神として二人を祀る。
ここで、武内宿禰=猿田彦=天日槍、と考えれば、天皇家は武内宿禰であり蘇我氏ということになる。
しかし、日本書紀編纂に関わった藤原氏からすると、それは大化の改新で天皇家を討ち取ったことになり都合が悪いので、武内宿禰を天皇家忠臣として別家系の架空の存在にしてしまい、また蘇我氏が出雲からヤマトへやってきた話を出雲の国譲りという神話に置き換えることで、巧妙に蘇我氏と天皇家と武内とを別者に仕立て上げた。

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