通信の世紀: 情報技術と国家戦略の一五〇年史


2019年2月7日読了

サブタイトルの「情報技術と国家戦略の150年史」が本来のタイトルなのだろう。
著者はKDDのOBのようで、豊富な情報収集力を使って日本の電気通信を時系列に追う。
明治期に入って直ぐに大陸との電信網が敷設されるに当たり、日本側の施設に対する権利を巡る英国との争いから始まる。
単なる通信技術の解説ではなく、まさしく国家のインテリジェンスを担う機能としての通信をテーマとして、大東亜戦争が終わるまではやはり軍事との関係、さらに戦後は国際電信電話の設立にまつわる政治的な駆け引き、そしてNTTの民営化、さらには分割(分社)に至る海外との駆け引きなど、通信が政治や外交と深いつながりを持つことを改めて確認させられる。
一番興味をひいたのは、大東亜戦争の開戦通告が真珠湾攻撃よりも数時間遅れたことについての、通信文を一つ一つ追いかけていきながら丁寧な分析。通信文も巻末に添付されている。大使館員が任務を懈怠したという俗説を覆し、当時の通信手順や暗号技術を前提としたときの緊急時の国際通信について外務省と在外大使館との認識のズレからくる部分が大きい点を指摘する。この文は、米国側には傍受解読されており、その記録とも照らし合わせて示すことで、日本はこの時点で情報戦には負けていることを示唆している点は鋭い。

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