「AI資本主義」は人類を救えるか


2018年12月29日読了

著者の中谷巌先生は学生時代に一度だけ聴講したことがあるが、それ以上に会計士試験のときに「入門マクロ経済学」で随分とお世話になった。
先生の主宰される「不識塾」での議論がベースになっているようだが、経営者などを呼んで講義をしてもらい議論をするというもので、半分くらいは「サピエンス全史」。

サピエンスは読んでいないが、本書によれば、人間(ホモ・サピエンス)は虚構を作ることで社会を発展させてきたがその行き着いた姿が金融資本主義。しかしこれからはデータによって世の中が支配される「AI資本主義」にいくというデータイズム。
資本主義のベースにあるものは個別性を排除して普遍的なものを広めていくという西欧の戦略が旨く行かなくなっており、アメリカのトランプ政権や英国のEU離脱などかつてのリーダ国が国益を優先せざるを得なくなっている姿にその一端を見出す。
対して、これからは「人新世」の時代を迎えるが、AI資本主義はその排除の論理を克服しない限り旨く行かないから、「包摂」へと向かうべきで、それは日本の培った文化に利点があるという。

首肯できるところと疑問なところとあるが、そもそも経済というものの捉え方の根源が貨幣からより汎用性のある情報に変わっていく中で、人々の安寧などこれまでの経済価値に表せないものをどのように「包摂」していけばよいのかという、経済学本来の問題も議論してほしかったな。

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