直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論

直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論
野中 郁次郎 山口 一郎
KADOKAWA (2019-03-28)

2019年4月30日読了

経営学者の野中先生と哲学者の山口先生のコラボによる出版。何故に経営学と哲学とが関係するのかは、経営を意思決定とそのための情報処理システムと考えるところから、知識創造というパラダイムに至るまでに現象学的なアプローチが必要だからというのが、本書の狙うところである。ただこれは講演等で何度も耳にしている話でもあり、言葉は頭に入るようになってきたが、いざ自分の言葉で説明しようとすると、とても難解なのである。

現象学は、人はなぜそれをそれと感じるのかという問を明らかにしようとする。私なりの理解では、そこには感じたままのものに意味をつけるのは自分の身体感覚(苦楽、快・不快など)であり、見たり触ったり聞いたり使ったりして初めてその意味が分かる。さらにそこに他者との交流を通じて自分の考えと他者との考えが共感されたという実感を持ち、意味が共有されていくということだ。

知識創造プロセスのもっとも根本にあるのは、この認知の部分であり、自分と他者との認知がSocialization共同化されるところから創造プロセスが始まっていくためで、一般には世の中の課題と自らの能力や思考が繋がる瞬間の閃きであろう。

それを自組織にもたらそうとするとまたこれが難解なのであり、それが出来るのがリーダーシップのある経営者という考えは、厳しい課題である。あい対する事象(それは利害対立であったり、技術的な不整合であったり、いろいろ)を二項から選択するのが意思決定ではなく、より高い次元で捉えて、あれもこれもを総合する二項動態的経営が目指すべき姿だという。さて。

最後に、自分の領域である監査における知識創造という観点から、最も懸念していることが書いてあったので、引用しておこう。
ホンダジェットは小型ジェットのエンジンをそれまでの常識を覆して両翼の上に載せる形を特徴としており、それを考えついた開発者である藤井氏の言葉である。

われわれが飛行機の研究を始めた70〜80年代の頃は、コンピュテーショナルなパワーがなかったので、飛行機の本質的に重要なところを考え抜いて8点に絞り込んで評価しなくてはならなかったのですが、いまでは2000点もすぐに測定できます。しかし残念ながら、コンピュータ・シミュレーションが進めば進むほど、限られた情報から真の知を得る本質洞察力が劣化していきますね。(p259)

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